戦争ビジネスという巨大市場(2)
2004年4月9日(続き)
3.戦争関連業務の民間委託と外国委託
ITビジネスとか介護ビジネスといった分野があるように、とくに米国と英国では戦争ビジネスというのが、相当な市場規模で想定されてる。要するに彼らは、その分野で巨大ビジネスが成り立つように戦争を画策し、実際にそれを起こしているということだ。そしてそれは、今まで「正規軍」によって行なわれてきた戦争関連の諸々の仕事の一部を、民間企業に発注(民営化)することによって成り立っている。
有名なのが、チェイニー副大統領の関係してる「ハリバートン」という米石油関連会社とそのグループ企業で、イラク戦争と復興事業で既に1兆円を超える受注をしている。チェイニーはパパ・ブッシュ政権で国防長官をやっていたときにハリバートンに便宜を図り、それから同社に天下っている。そして辞めた今も、株や退職者報酬をもらっている。そんなモロエゴいことが許されるのが不思議だけど。
そうしてみれば、ブッシュやネオコンの関心がアルカイーダやタリバンではなく、一貫してイラクにあったことも頷ける。国防長官のラムズフェルドが「アフガンよりイラクだ」と言ったというのも、石油の出ないアフガンではビジネスにならないからだ。
って、そんなことは誰でも分かってる話だろうけど。
日本ではサラリーマンのことをビジネス戦士と言ったりするけど、米国の兵士たちこそ、その巨大な戦争市場の最前線で働くビジネス戦士なのだ。(もっとも、過去の戦争でも軍隊というのは、たいていそうした役割を担ってるけど。) そして200万円程度の年収と引換えに、命を張って「ハリバートン」などの軍事関連企業のために貢献するというわけだ。かわいそうに。でも地上部隊の兵士の多くは、黒人やヒスパニックその他社会の低層にいる人間なので、多少の犠牲が出たところで、政権中枢の連中にとってはべつにどうということはないのだろう。
とは言え、あまり死傷者が多いと世論もうるさくなる。それで警護などの危険業務を傭兵に肩代わりさせることによって、公式の兵士損傷数を抑えるという方策が採られる。そうして「ブラックウォーター」のような特殊部隊上がりの傭兵斡旋会社にも、ビジネスチャンスが提供されるというわけだ。いまイラクには傭兵が約4000名いるとされていて、この前イラク中部のファルージャで殺された四人の民間人もその一員だ。
それと民間委託とともに役割を期待されているのが、諸外国の軍隊なのだ。もし占領地の治安維持を下請けしてくれるなら、少しはおいしい目も見られるというわけだ。つまり日本の自衛隊も、下請け業者としてイラクに出張してるということになるのだ。戦争屋の下請けのために、日本の自衛隊員が命をかけたり犠牲になったりする必要は全くない。
イラクに兵を送っている国はみな、そうした戦争ビジネスのおこぼれ頂戴組だ。でもほとんどは米国企業が独占気味で、英国もあまりおいしいところを貰えていないらしい。それで英首相のブレアはそのへんのことをブッシュに懇願するため、何度か足を運ばざるを得なくなっているということのようだ。ブッシュ政権は自分たちの利益確保が最優先だし、それにブッシュに政治資金を出さないようなところになんか、あまり金を落としてくれないのだ。
けっきょくブッシュたちの動機が戦争ビジネスにあるので、儲かりそうなところ(イラクなど)で戦争を仕掛けられるなら、開戦の口実は何でも良かったのだ。実際大量破壊兵器がなさそうだということは分かっていても、チンピラがイチャモンつけるのと同じ。「ケンカを売る」と決めて因縁をつけてくるチンピラには、もういくら言い訳しても無駄なのだ。サダム・フセインもまったく自業自得だけど、眼つけられた相手も悪かった、といったところ。
とはいえ、米国は戦費も経費も膨大になり、昨日のニュースに「新多国籍部隊参加を仏などに要請」とあったようにまた下請け業者を新しい名目で募集しようとしてるけど、そんな話に乗る国、出てくるかな。
加えてシーア派の一部の反乱でますます手詰まりになりかけてきてるし、それにもし日中戦争の時の国共合作のように、シーア派とスンニ派が全面的に手を結んで反乱を起こしたりすれば、ベトナム戦争化してもう米英軍による占領も終わりだ。もしそうなって米英軍が出て行ったあとは、国連が積極的に乗り出す以外にないと思われる。そうでないとシーア・スンニ・クルドの間で収拾のつかない事態になるかもしれないから。もし自衛隊(もしくは国連平和維持部隊)に出番があるとしたら、そういうときこそなのだ。国内での宗教戦争戦や民族戦争は、反占領戦争などよりもっと一般市民には歓迎されない。降って湧いたような占領軍ではなく、内戦を防ぐ目的と復興支援とで自衛隊が行くなら、イラク国民に歓迎されるだろう。またそうした望まれる場面で登場して対日感情ももっと良くなれば、日本製品ももっと買ってくれる。それは戦争を仕掛けて物を分捕って仲間内で分け合う汚いビジネスなんかとは違う、古くからの正統なビジネスなのだ。
早くイラクでのロクでない戦争屋ビジネスが破綻する日が来てほしい。
資料として、各社新聞記事、田中宇サイト等を参考にしています。
民営化で加速する戦争 イラク戦争1年(東京新聞)
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20040320/mng_____tokuho__000.shtml
民間軍事会社に秘密のベール…ファルージャ襲撃で注目(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20040404id25.htm
田中宇の国際ニュース解説
http://tanakanews.com/e0406iraq.htm
<追加>
バスラのモスクでシーア派とスンニ派が合同で礼拝・集会をやったらしい。
もしかしてイラクでシーア派とスンニ派が手を結ぶ動きは、国内だけでなく、イラン(シーア派)やハマス(パレスチナ)やヒズボラ(レバノン)との連携も視野に入っているのかもしれない。そうなると中東全体の大きな動きになる。もうブッシュはどん詰まりだろうという認識かな。ブッシュが起死回生でドンパチ派手なバクチを打たなければいいけど。
<追加>
・邦人誘拐
犯行グループは、韓国人牧師たちは解放して、日本人だけ誘拐したということのようだ。もしアルカイダだとしたら、ちょっと嫌な感じだ。
日本はやっぱり米英と同列扱いされてきたのか。
3.戦争関連業務の民間委託と外国委託
ITビジネスとか介護ビジネスといった分野があるように、とくに米国と英国では戦争ビジネスというのが、相当な市場規模で想定されてる。要するに彼らは、その分野で巨大ビジネスが成り立つように戦争を画策し、実際にそれを起こしているということだ。そしてそれは、今まで「正規軍」によって行なわれてきた戦争関連の諸々の仕事の一部を、民間企業に発注(民営化)することによって成り立っている。
有名なのが、チェイニー副大統領の関係してる「ハリバートン」という米石油関連会社とそのグループ企業で、イラク戦争と復興事業で既に1兆円を超える受注をしている。チェイニーはパパ・ブッシュ政権で国防長官をやっていたときにハリバートンに便宜を図り、それから同社に天下っている。そして辞めた今も、株や退職者報酬をもらっている。そんなモロエゴいことが許されるのが不思議だけど。
そうしてみれば、ブッシュやネオコンの関心がアルカイーダやタリバンではなく、一貫してイラクにあったことも頷ける。国防長官のラムズフェルドが「アフガンよりイラクだ」と言ったというのも、石油の出ないアフガンではビジネスにならないからだ。
って、そんなことは誰でも分かってる話だろうけど。
日本ではサラリーマンのことをビジネス戦士と言ったりするけど、米国の兵士たちこそ、その巨大な戦争市場の最前線で働くビジネス戦士なのだ。(もっとも、過去の戦争でも軍隊というのは、たいていそうした役割を担ってるけど。) そして200万円程度の年収と引換えに、命を張って「ハリバートン」などの軍事関連企業のために貢献するというわけだ。かわいそうに。でも地上部隊の兵士の多くは、黒人やヒスパニックその他社会の低層にいる人間なので、多少の犠牲が出たところで、政権中枢の連中にとってはべつにどうということはないのだろう。
とは言え、あまり死傷者が多いと世論もうるさくなる。それで警護などの危険業務を傭兵に肩代わりさせることによって、公式の兵士損傷数を抑えるという方策が採られる。そうして「ブラックウォーター」のような特殊部隊上がりの傭兵斡旋会社にも、ビジネスチャンスが提供されるというわけだ。いまイラクには傭兵が約4000名いるとされていて、この前イラク中部のファルージャで殺された四人の民間人もその一員だ。
それと民間委託とともに役割を期待されているのが、諸外国の軍隊なのだ。もし占領地の治安維持を下請けしてくれるなら、少しはおいしい目も見られるというわけだ。つまり日本の自衛隊も、下請け業者としてイラクに出張してるということになるのだ。戦争屋の下請けのために、日本の自衛隊員が命をかけたり犠牲になったりする必要は全くない。
イラクに兵を送っている国はみな、そうした戦争ビジネスのおこぼれ頂戴組だ。でもほとんどは米国企業が独占気味で、英国もあまりおいしいところを貰えていないらしい。それで英首相のブレアはそのへんのことをブッシュに懇願するため、何度か足を運ばざるを得なくなっているということのようだ。ブッシュ政権は自分たちの利益確保が最優先だし、それにブッシュに政治資金を出さないようなところになんか、あまり金を落としてくれないのだ。
けっきょくブッシュたちの動機が戦争ビジネスにあるので、儲かりそうなところ(イラクなど)で戦争を仕掛けられるなら、開戦の口実は何でも良かったのだ。実際大量破壊兵器がなさそうだということは分かっていても、チンピラがイチャモンつけるのと同じ。「ケンカを売る」と決めて因縁をつけてくるチンピラには、もういくら言い訳しても無駄なのだ。サダム・フセインもまったく自業自得だけど、眼つけられた相手も悪かった、といったところ。
とはいえ、米国は戦費も経費も膨大になり、昨日のニュースに「新多国籍部隊参加を仏などに要請」とあったようにまた下請け業者を新しい名目で募集しようとしてるけど、そんな話に乗る国、出てくるかな。
加えてシーア派の一部の反乱でますます手詰まりになりかけてきてるし、それにもし日中戦争の時の国共合作のように、シーア派とスンニ派が全面的に手を結んで反乱を起こしたりすれば、ベトナム戦争化してもう米英軍による占領も終わりだ。もしそうなって米英軍が出て行ったあとは、国連が積極的に乗り出す以外にないと思われる。そうでないとシーア・スンニ・クルドの間で収拾のつかない事態になるかもしれないから。もし自衛隊(もしくは国連平和維持部隊)に出番があるとしたら、そういうときこそなのだ。国内での宗教戦争戦や民族戦争は、反占領戦争などよりもっと一般市民には歓迎されない。降って湧いたような占領軍ではなく、内戦を防ぐ目的と復興支援とで自衛隊が行くなら、イラク国民に歓迎されるだろう。またそうした望まれる場面で登場して対日感情ももっと良くなれば、日本製品ももっと買ってくれる。それは戦争を仕掛けて物を分捕って仲間内で分け合う汚いビジネスなんかとは違う、古くからの正統なビジネスなのだ。
早くイラクでのロクでない戦争屋ビジネスが破綻する日が来てほしい。
資料として、各社新聞記事、田中宇サイト等を参考にしています。
民営化で加速する戦争 イラク戦争1年(東京新聞)
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20040320/mng_____tokuho__000.shtml
民間軍事会社に秘密のベール…ファルージャ襲撃で注目(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20040404id25.htm
田中宇の国際ニュース解説
http://tanakanews.com/e0406iraq.htm
<追加>
バスラのモスクでシーア派とスンニ派が合同で礼拝・集会をやったらしい。
もしかしてイラクでシーア派とスンニ派が手を結ぶ動きは、国内だけでなく、イラン(シーア派)やハマス(パレスチナ)やヒズボラ(レバノン)との連携も視野に入っているのかもしれない。そうなると中東全体の大きな動きになる。もうブッシュはどん詰まりだろうという認識かな。ブッシュが起死回生でドンパチ派手なバクチを打たなければいいけど。
<追加>
・邦人誘拐
犯行グループは、韓国人牧師たちは解放して、日本人だけ誘拐したということのようだ。もしアルカイダだとしたら、ちょっと嫌な感じだ。
日本はやっぱり米英と同列扱いされてきたのか。
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