ADOLESCENCE

2004年6月27日
(前)思春期の少年少女がらみで起きた暴力事件に関する米国での調査研究論文のダイジェストとアブストラクトの翻訳。あくまで米国の事例です。
(別のほうのwebLogの内容を転載)

■ HealthDay (June 24, 2004)
http://www.healthday.com/view.cfm?id=519324
医療・健康関連のニュース配信サイトで、一般向けに関連情報をダイジェストして提供している。


少女たちは男の子と違ったケンカをする
十代前の少女たちの暴力は仕返しが主要因――調査により判明


フィラデルフィア子ども病院の調査研究によると、十代前(preteen)の少女たちの間でのほうが同年齢の男の子たちよりも、以前に起きた争いが暴力行為の火に油を注いでいることが多い。

調査対象は、人間関係から生じた暴力(*)によるケガの治療のため、病院の緊急医療部門に来ることになった 8〜14歳の子ども190人。
 * (訳注) 強盗傷害や性暴力などの事件ではなく、個人的な人間関係から生じる暴力沙汰が想定されている。

男女ともケンカの理由は、「からかわれた」「バカにされた(**)」というのが最も一般的である。また少年同士の事件とは対照的に、少女のあいだでの衝突は、しばしば以前に起きたケンカの再発であることが多い。
 **(訳注) 侮蔑、軽視、見下し

少年たちとくらべて、少女間での暴力沙汰は家で起きやすく、その場合家族が止めに入ることが多い。

調査によると、少女が一人以上巻き込まれている事件では武器が使われる傾向があり、その際少女たちは少年たちよりも武器――棒や石などのような鈍器――によって傷つけられがちであることがわかった。

調査対象190人のうち 5人が、ピストルなどの銃による負傷を受けている。

この調査は、"Arch Pediatr Adolesc Med." 6月号に掲載されている。

「子どもを巻き込んだ個人間の暴力事件についてはさらに調査することが残っているけど、この研究は親や介護者に情報を提供するものです」と、筆頭発表者で緊急医療の医師 Dr. Cynthia J. Mollen は、予め用意された声明の中で述べる。

「例えば『バカにすること』が暴力を引き起こす原因として顕著に見られるので、子どもと親は、相手からの侮辱に非暴力的な態度で対応するテクニックを学ぶことによって、きっと得られるものがあるに違いありません。

加えて、少女たちは暴力の原因となる仕返しを受けやすいので、医療担当者は傷ついた少女たちを、安全性への懸念からも仕返ししたい気持ちからも遠ざけて保護することができるでしょう。

暴力行為におけるジェンダー差の理解は、この年令グループの子どもたちに対する、学校ベースやコミュニティでの調停プログラムのデザインにきっと役立つにちがいありません。」と彼女はいう。

 
■ ARCHIVES OF PEDIATRICS AND ADOLESCENT MEDICINE
http://archpedi.ama-assn.org/cgi/content/abstract/158/6/545
小児思春期医療分野の専門家たちによる(論文発表前の)評価用 peer-review のネット・アーカイブ。


思春期の少女と少年の、対人関係に由来する暴力事件の特徴

背景:これまでの多岐にわたる研究によって、少女たちが人間関係から生じる暴力に結びついているということが明らかにされてきた。しかしながら、少女がらみの暴力事件に関するこれといった見解は、ほとんど知られていなかった。

目的:前思春期や思春期での人間関係に由来する暴力事件の特徴を述べるとともに、少女がらみの事件と少年だけが関与する事件との有意差を判定することを目的とする。

調査計画:8〜14歳、クロス・セクショナル分析。(以下略)

結果:190の患者を調査対象とした。58件(31%) が少女、74件(39%)が少女を巻き込んだ事件、156件(82%)が平日に発生、127件(82%)がケンカと分類され、140件(74%)が顔見知り、93件(49%)が学校で起きている。少女がらみの事件は、少年だけによる事件よりも、家で起きる傾向がある(relative risk [RR], 1.6; 95% confidence interval [CI], 1.0-2.5)。 少年少女とも、「バカにされた」と「からかわれた」を争いのいちばんの理由として述べている。少女がらみの事件では、概して「以前の争いの再発」に関係していることが多く (RR, 6.4; 95% CI, 1.9-21.5)、大人の介入によって終らせられる傾向があり(RR, 1.7; 95% CI, 1.1-2.6)、(言葉だけでなく)物理的に争いを止めさせようとする家族がいる(RR, 3.7; 95% CI, 1.5-9.1)。

結論:前期思春期や早期思春期の少女を巻き込む暴力事件は、以前に起きた出来事の継起になりがちで、また家庭を巻き込んだり家族の仲裁を招くことが多い。暴力により傷ついた少女たちにたいして医療専門家は、安全性の懸念からも仕返しをたくらんだりする意図からも遠ざけて保護する必要がある。そして今後二度と事件が起きないように、家族も積極的に関わってゆくことが要請される。

       *

暴力沙汰に銃まで登場する米国でのケースが、文化の異なる日本にそのまま当てはまるとは思えないけど、調査で指摘されている「バカにされた」というのが衝突の原因になってるということと、少女の場合は以前のトラブルが事件の再発につながっているという点に注目。

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