■空間の詩学
ISBN:4480087249 文庫 ガストン・バシュラール(訳:岩村 行雄) 筑摩書房 2002/10 ¥1,680
家、宇宙、貝殻、ミニアチュール――人間をとりまくさまざまな空間は、どのような詩的イメージを喚起させるのか? ……
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われわれのいるこの世界は、まず空間があってそれから事物があるのではない。三次元空間は、そのなかで人や事物が位置を占める、コンテナ(容器)ではない。そういうのは稀だ。逆に、<私>の運動や知覚や認識が、「空間を与える」のだ。認知環境とのリアクションから生まれ、そして消えるその都度の出来事の束が、空間なのだ。そうした空間はあまり因果的ではないので、イメージや比喩の活躍の場でもある。
バシュラールにとって詩的イメージとは、ミニアチュールの微小なものから宇宙や無限大なものまで、それぞれのユニークな空間が想像力と夢想によって生成される場だ。空間の詩学とは世界そのものの表現であり、そしてたましいの息吹である。詩的イメージとは「霊魂のおもてに突如としてうかぶ浮彫であり」であり、もしそういう言葉が嫌なら、オーラ(アウラ)でもいいかも。あるいは、人の心に励起状態を生ずるもの、たとえば、「おーーぉ!」とか「あぁー!」とか「幸福な気分」とか「懐かしい」とか、何かときめくものだ。
これは詩的なイメージだけでなく、散文や小説でもおなじだろうし、さらに美術や写真や映画などのビジュアルについても言えるだろう。
それにしても『空間の詩学』は、わたしの理解力が不足してるところもあるのだろうけど、なかなか読むのが大変です。フランス語は分からないのだけど、訳がちょっと分かりづらいような気が。
ちょうど澁澤龍彦『夢の宇宙誌』とヴァレリー『人と貝殻』(松田浩則訳)で、該当する箇所(「貝殻」)を訳したものがあったので、比較してみる。
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■『つぐみ』(市川準監督)
いまさらなのだけど、ビデオで『つぐみ』(市川準監督)を観た。
吉本ばななの『TUGUMI』は、(エラそうな言い方になるけど)よくできた作品で、それこそ詩的イメージにあふれた小説だ。だからそれを映画に撮りたいという気持ちが分からないでもないけど、けっきょく単なる原作からとったエピソードの羅列のような気がした。
まりあと陽子は、つぐみがいくら我侭といえ、なにか結びつける絆があり、その関係を表現するたのにこの小説はある、ともいえる。たとえば小学生のときの回想で、三人がいつも見ていたTV番組が終了したあと、夜中に誰ともなく集まって、そして隣町まで行くというシーンがある。これなども、三人の気脈が相通じているという例証で、原作のあの夜のワクワクした気持ちが、映画では表現できなかったように思う。そして、つぐみが白い小石を拾ったという回想も、語り手のまりあの思いが込められていて、単に事実として小石を拾うというエピソードではないのだ。
小説には文学空間で紡がれたたましいがあるし、映画には映像作品のたましいがある。でもこの映画では、それが感じられなかった。
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■STUDIO VOICE 6月号 最終コミックリスト200
"00年代マンガ"のすべて!! 『DEATH NOTE』から『ハチミツとクローバー』、『NANA』から『世界の終わりの魔法使い』まで!
もうとっくにガイシュツかもしれないですが・・・、そういうことです。
というか、スタジオ・ボイスは毎月6日に発売だそうで、今日は7月号が店頭に……。役立だない情報でした……、ウン、ザンネ〜〜ン!
あ、でも、バックナンバーを揃えている本屋もあります。
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■デザイン&アート&ゲーム・サイト
□a collaborative art project 2004
http://www.eviltree.de/zoomquilt/zoom.htm
[ click here to start ]のクリックと、ドラグup/downでズーム・イン/アウトとスピードの調整ができる。
□funnel design group
http://www.funneldesigngroup.com/
□SUILEN
http://www.suilen.net/
SUILENという日本のグループ。日本にいないハチドリもでてくるが、美しい。
□amanitadesign(もしかして、もうすっかり有名なのかも)
http://www.amanitadesign.com/samorost/
シュールなゲーム。画面に手がかりがある。
5画面(?)をやっとこクリアできた。
ISBN:4480087249 文庫 ガストン・バシュラール(訳:岩村 行雄) 筑摩書房 2002/10 ¥1,680
家、宇宙、貝殻、ミニアチュール――人間をとりまくさまざまな空間は、どのような詩的イメージを喚起させるのか? ……
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われわれのいるこの世界は、まず空間があってそれから事物があるのではない。三次元空間は、そのなかで人や事物が位置を占める、コンテナ(容器)ではない。そういうのは稀だ。逆に、<私>の運動や知覚や認識が、「空間を与える」のだ。認知環境とのリアクションから生まれ、そして消えるその都度の出来事の束が、空間なのだ。そうした空間はあまり因果的ではないので、イメージや比喩の活躍の場でもある。
バシュラールにとって詩的イメージとは、ミニアチュールの微小なものから宇宙や無限大なものまで、それぞれのユニークな空間が想像力と夢想によって生成される場だ。空間の詩学とは世界そのものの表現であり、そしてたましいの息吹である。詩的イメージとは「霊魂のおもてに突如としてうかぶ浮彫であり」であり、もしそういう言葉が嫌なら、オーラ(アウラ)でもいいかも。あるいは、人の心に励起状態を生ずるもの、たとえば、「おーーぉ!」とか「あぁー!」とか「幸福な気分」とか「懐かしい」とか、何かときめくものだ。
これは詩的なイメージだけでなく、散文や小説でもおなじだろうし、さらに美術や写真や映画などのビジュアルについても言えるだろう。
それにしても『空間の詩学』は、わたしの理解力が不足してるところもあるのだろうけど、なかなか読むのが大変です。フランス語は分からないのだけど、訳がちょっと分かりづらいような気が。
ちょうど澁澤龍彦『夢の宇宙誌』とヴァレリー『人と貝殻』(松田浩則訳)で、該当する箇所(「貝殻」)を訳したものがあったので、比較してみる。
◆貝殻にはきわめて明晰、確実、硬質な概念が対応するので、貝殻をただ単純にえがくことができない詩人、これについてかたらなければない詩人は、さしあたってイメージに不足する。夢想される価値にのがれようとしても、形状がしめす幾何学的現実によってひきとめらてしまう。(『空間の詩学』)
◆貝殻には、じつに鮮明な確固とした一つの概念が結びついてるので、絵に描く場合は簡単だが、詩人がこれについて語らねばならない場合は、まずイメージの不足を感じる。せいぜい、形体の幾何学的現実が心に思い浮かべるいろいろな価値について、語ることぐらいしかできはしない。(澁澤龍彦『夢の宇宙誌』)
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◆ある結晶、ある花、ある貝殻は、感覚できるすべてのものがもつあの通例の無秩序から脱却している。(『空間の詩学』)
◆(たくさんの雑音のなかから聞こえてくる純粋な音、あるいは純粋な音による旋律構成のように、)水晶、花、貝殻は、感覚で捉えられるものの全体が通常呈している無秩序状態から浮かび上がってくる。(ヴァレリー「『人と貝殻』)
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■『つぐみ』(市川準監督)
いまさらなのだけど、ビデオで『つぐみ』(市川準監督)を観た。
吉本ばななの『TUGUMI』は、(エラそうな言い方になるけど)よくできた作品で、それこそ詩的イメージにあふれた小説だ。だからそれを映画に撮りたいという気持ちが分からないでもないけど、けっきょく単なる原作からとったエピソードの羅列のような気がした。
まりあと陽子は、つぐみがいくら我侭といえ、なにか結びつける絆があり、その関係を表現するたのにこの小説はある、ともいえる。たとえば小学生のときの回想で、三人がいつも見ていたTV番組が終了したあと、夜中に誰ともなく集まって、そして隣町まで行くというシーンがある。これなども、三人の気脈が相通じているという例証で、原作のあの夜のワクワクした気持ちが、映画では表現できなかったように思う。そして、つぐみが白い小石を拾ったという回想も、語り手のまりあの思いが込められていて、単に事実として小石を拾うというエピソードではないのだ。
でも私は、あらゆる点で、つぐみが「生の人間であること」を忘れそうになる度にその石ころのことと、あの夜、はだしで外に出て、歩かずにはいられなかった幼いつぐみのことを思い出して、なんとなくもの哀しい、冷静になるのだった。
小説には文学空間で紡がれたたましいがあるし、映画には映像作品のたましいがある。でもこの映画では、それが感じられなかった。
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■STUDIO VOICE 6月号 最終コミックリスト200
"00年代マンガ"のすべて!! 『DEATH NOTE』から『ハチミツとクローバー』、『NANA』から『世界の終わりの魔法使い』まで!
もうとっくにガイシュツかもしれないですが・・・、そういうことです。
というか、スタジオ・ボイスは毎月6日に発売だそうで、今日は7月号が店頭に……。役立だない情報でした……、ウン、ザンネ〜〜ン!
あ、でも、バックナンバーを揃えている本屋もあります。
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■デザイン&アート&ゲーム・サイト
□a collaborative art project 2004
http://www.eviltree.de/zoomquilt/zoom.htm
[ click here to start ]のクリックと、ドラグup/downでズーム・イン/アウトとスピードの調整ができる。
□funnel design group
http://www.funneldesigngroup.com/
□SUILEN
http://www.suilen.net/
SUILENという日本のグループ。日本にいないハチドリもでてくるが、美しい。
□amanitadesign(もしかして、もうすっかり有名なのかも)
http://www.amanitadesign.com/samorost/
シュールなゲーム。画面に手がかりがある。
5画面(?)をやっとこクリアできた。
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