時は岸辺のない流れ…
「人生は歩きまわる影法師、あわれな役者だ、舞台の上でおおげさにみえをきっても、出場が終われば消えてしまう。」(シェークスピア『マクベス』)

よく「勝ち組」とか「負け組」と言われるが、もし「死」を敗北とする視点からみたら、人生行き着くところは「死」以外にないので、けっきょく人はすべて「負け組」にしかならない。

ライブドアとか東横インとかマンション偽装疑惑関係者などのセコイ連中も、その他ビジネスでのセコイ連中も、利益誘導や官製談合で儲けるセコイ政治家や官僚も、振込詐欺などのセコイ連中も、しょせんくたばってそこでオシマイ。

えっ? オマエもくたばってオシマイ?

そうですか。
じゃあ、どうせ死んでオシマイなら、大金持ちになって宮殿のような大邸宅を作って
……もう遅い、というか、そんな才覚がないのに。
しかたない、
(1) 現世はあきらめて、来世に期待する♪
(2) ふて寝する( ?____○ zzz)
のどちらに決めよう……
って、選択肢がこんなのしかないのか!?

 
さてさて、ホリエモンが忘年会の余興で舞台上から来会者に札束を投げ与えたとか、東横インの社長は慈善事業に寄付をするどころか、身体障害者用の設備や駐車場で浮かせた金で御殿を作ったとか、そういう成金の行状ですが、
「ああ、ニッポンの成金は」(From 紀田順一郎のIT書斎)
http://www.kibicity.ne.jp/~j-kida/image/2006/012101/index.html
欧米では巨額のカネをもうけたら、多少は蔵書機関やホールなど公共施設に名をのこそうとします。(中略) なぜ日本の成金は、刹那的な浪費ばかりを考えるのでしょうか。

紀田氏によると、この風潮は長い鎖国時代をとおして培われた封建性(身分制)によるもので、商人は幾ら稼いでも社会の上層には参画できないので、刹那的な濫費に走るということ。そこが、市民的革命を経た西欧ブルジョアジーとの大きな違いである。そして、明治以降も立身出世という競争システムを通じて能力の選別を行うようになり、それが戦後数十年の現在も続けられいて、いわゆる『勝ち組』とか『下流社会』という構図に集約されているという。

このへんの日本の商人と西欧ブルジョアジーの違いについては、歴史学者の阿部謹也氏の「世間と社会」を使うとクリアな回答が得られそう。
(西欧による個人が)12世紀に、神に対して自分を位置づけるなかで生まれてきたものです。神に対して自分を位置づけるという発想法は、社会の身分や地位とは関係なく唯一神である神と自分を対置させるという発想ですから、日本にはそういう発想がほとんどなかった、と言っていいと思います。
日本の場合は、個人はどのようにして個人としての自己を主張するのかというと、唯一の神に対してではなくて、世間に対してです。(阿部謹也『ヨーロッパ史をいかに学ぶか』)


だから東横インの西田社長は無断改築が問題になったとき、それが社会的な問題だとは露とも知らずに、すっかり開き直って非難を浴びた。それで今度は慌てて釈明会見を行ったが、あれは口だけのお詫びというのは誰が見ても明らか。でも「内観のおしょうさんに申し訳ないことをした」と詫びたのは本当で、あれは「社会」ではなく「世間」、つまり身内に対して詫びたのだった。

ところで、内観というのは心理療法のことばかりと思ってたのに、悪名高い自己啓発セミナーと同類として使われているというのは知らなかった。
精神的に困ってない人に内観なんて、どうかしてる。まあ内観療法というのもいってみれば、良く言うと「気づき」、悪く言うと「洗脳」のようなものなので、会社の都合に適合した脳みそ改造としては使えるかもしれない。
心理療法の内観療法も、それが効く人と効かない人がいて、少なくとも効いた人には治療になって利益になる。でも、ビジネス用途で内観を受けさせられた人は、効く効かないのいずれにしても、きっと悲惨だろうな。じっさいTVのインタビューで元社員(女性)が、「内観は、すっかりはまって泣き叫ぶ人たちもいれば、はまらない人もいる」というようなことを言ってた。

 
それはさておき、なにも成金だけに限ったことじゃないのだけど、日本人にとって世間と社会や競争システムといった問題のほかに、やはり人生の終わりにある「死」の問題があると思う。要するにそこにあるのはニヒリズムで、死を忘れるための浪費と遺産だ。刹那的な浪費をやり、そして遺伝子を有利な条件で残そうとして遺産を残す。(まあ、金があれば生き残りへもリスクも少ないらしい。ちなみに、遺伝子の利己/利他的な振る舞いは、真木悠介『自我の起源──愛とエゴイズムの動物社会学』参照)
要するに、死をどう考えていいのか分からない、ということ。御愁傷さま。
え、オマエも?
いえ、私は現世はあきらめて来世に期待してふて寝しますから、いいんです。

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